研究ノート
グミ 3 種のゲル化剤——配合の違いはどこまで見分けられるか
Field note
最大荷重だけ見ると、3 つのグミはほとんど同じです。押しはじめを見ると、まったく違っていました。
- 試料
- 市販グミ 3 種(ゲル化剤の組成違い)
- 試験
- 圧縮試験
- 測定モード
- MODE 1(定深度)
- 進入距離
- 6 mm
- 感圧軸
- No.1(φ15 mm 平面)
- ステージ移動速度
- 60 mm/min
- 試験室環境
- 23 ± 1 ℃ / 50 ± 5 %RH
要旨
ゲル化剤の組成が異なる市販グミ 3 種を同一条件で圧縮したところ、 最大荷重は 10.19〜12.16 N と 1.19 倍の範囲に収まったのに対し、 押しはじめ(0.2〜1.5 mm)の勾配は 0.291〜0.994 N/mm と 3.41 倍に開いた。 しかも勾配の順序は、製品の説明にある食感の順序(強い噛みごたえ > 高弾力 > やわらか・歯切れ)と 一致しました。 最大荷重という一点の値は、配合の違いを捉える指標として分解能が低いことが 示唆されます。
背景と目的
グミの食感は消費者の選好に直結します。ゲル化剤の選択——ゼラチン単独か、 ペクチンや増粘多糖類を併用するか——は、その設計の中心にあります。
物性測定でよく使われるのは最大荷重(硬さ)です。値が 1 つに定まり、 装置が自動で出してくれるため扱いやすい。しかし最大荷重は曲線の 1 点にすぎません。 同じ高さに達する曲線でも、そこに至る道筋は違いえます。
目的は 2 つです。 (i) ゲル化剤の異なる 3 種について、最大荷重と押しはじめの勾配をそれぞれ定量化し、 どちらが配合差をよく分けるかを比べること。 (ii) 分解能の差が出るなら、それが製品の説明にある食感の順序と対応するかを見ることです。
実験方法
| 試料 | ゲル化剤 | 製品の説明(食感) |
|---|---|---|
| A | ゼラチン + 増粘多糖類 | 強い噛みごたえ |
| B | ゼラチン + ペクチン | やわらか・歯切れ |
| C | ゼラチン(単体) | 高弾力 |
- 試料:いずれも市販グミによく見られる代表的な構成です。 食感は製品情報にもとづく一般的な表現で、 本試験でパネルを組んだものではありません。
- 圧縮:試料台を 60 mm/min で上げてφ15 mm の平面に押し当て、6 mm まで定深度で貫入。 試料の形状・大きさをそろえ、同じ位置に置いて測定しました。
- 勾配:押しはじめの区間を 0.2〜1.5 mm と定義し、その傾きを求めました。 測定開始直後(0〜0.2 mm)は接触が安定しないため除いています。
※ 各試料 1 回の代表値です。ただし同一試料を 5 回繰り返した予備測定では 変動係数 3 % 以内に収まっており、試料内のばらつきは小さいことを確認しています。 試料間(個体差)のばらつきは押さえていません。
結果と考察
2 つの指標の分解能
3 種の圧縮曲線を Fig. 1 に、算出値を Table 2 に示します。
| 試料 | ゲル化剤 | 最大荷重 [N] | 押しはじめの勾配 [N/mm] | 製品の説明(食感) |
|---|---|---|---|---|
| A | ゼラチン + 増粘多糖類 | 12.16 | 0.994 | 強い噛みごたえ |
| C | ゼラチン(単体) | 10.53 | 0.622 | 高弾力 |
| B | ゼラチン + ペクチン | 10.19 | 0.291 | やわらか・歯切れ |
最大荷重の幅は 1.19 倍、勾配の幅は 3.41 倍。 同じ試料から取った 2 つの指標で、分解能が 3 倍近く違います。
順序も一致します。勾配の順(A > C > B)は、 製品の説明にある食感の順(強い噛みごたえ > 高弾力 > やわらか・歯切れ)とそのまま重なりました。 最大荷重の順(A > C > B)も同じ向きではありますが、 差が 1.19 倍しかないため、実務では誤差に埋もれます。
なぜ立ち上がりの差が最大荷重まで持ち越されないのか
押し込みが進むと試料は横に広がり、感圧軸との接触面積と拘束のされ方が変わります。 初期の弾性率がそのまま最大荷重に比例するとは限りません。 これは観測された事実に対する一つの見立てであり、本試験で検証したものではありません。
言い換えると、最大荷重は「6 mm 押し込んだときに出た力」であって、 材料の性質そのものではありません。定深度モードでは進入距離が固定されるため、 深いところでの接触状態が値に効きます。配合の違いを見たいなら、 接触状態の影響が小さい押しはじめを見るほうが素直です。
結論
- 最大荷重は 1.19 倍しか違わないのに、押しはじめの勾配は 3.41 倍開いた。 同じ曲線から取る指標でも分解能が大きく違う。
- 勾配の順序は、製品の説明にある食感の順序と一致した。 配合の違いを捉える指標として、押しはじめの勾配が有効であることが示唆される。
- 最大荷重は「その深さまで押したときに出た力」であって、材料の性質ではない。 定深度モードでは接触状態が値に効く。
この測定が役に立つ場面
- ゲル化剤の種類・配合量を変えたとき、食感の差を数値で押さえたいとき
- 最大荷重では差が出ない試作品どうしを比較したいとき
- 「弾力」「歯切れ」を、曲線の立ち上がりとして定義したいとき
- 官能パネルの評価と機器の値を対応づけたいとき
市販品を試料としており、個々の製品の性質を保証するものではありません。食感の説明は製品情報にもとづく一般的な表現で、本試験で官能評価を行ったものではありません。