MEASUREMENT
測定で分かること
What we measure
食感は一つの数値ではありません。硬さ、弾力、もろさ、粘り——口の中で感じている複数の性質を、それぞれに合った方法で測ります。ここでは物性ごとに、何を測れば何が分かるのかを整理します。
- 感圧軸
- 円柱 φ5 mm ほか
- 押し込み速度
- 1 mm/s
- 温度
- 23〜25 °C(品目による)
- 出力
- 進入距離 [mm] と荷重 [N]
何を知りたいですか
Where to start
知りたいことがはっきりしていれば、それに合う物性と試験を選べます。近いものを選んでください。
硬すぎる・軟らかすぎると言われる
規格に合っているかを確かめたい。ロットごとの差を数値で押さえたい。
硬さ・軟らかさ → 02サクサク感を保ちたい
包装や保存条件で、どれだけ持つのかを比べたい。
もろさ・サクサク感 → 03口や歯に残る感じを抑えたい
くっつき方を、硬さとは別の数値として押さえたい。
付着性・粘り → 04噛み返してくる感じを設計したい
硬さが同じでも別の食感になる部分を捉えたい。
弾力 → 05温度で性状が変わる
冷蔵と常温で印象が違う理由を確かめたい。
粘弾性 → 06まだ漠然としている
まず測ってみて、どこに注目すべきかを見つけたい。
試験の種類を見る →測定の基本——押して、記録する
Principle
物性測定の多くは、試料に一定の速さで力を加え、そのときの「力」と「変形量」を連続的に記録することで行います。試料を押す(圧縮)、切る(切断)、引っ張る(引張)、あるいはごくわずかに揺らす(微小ひずみ)。加え方を変えることで、同じ試料から異なる性質を取り出せます。
得られるのは「力-変形」のグラフです。このグラフの高さ、傾き、途中の折れや細かな上下、離したあとの戻り方に、以下の物性が現れます。
硬さ・軟らかさ
Hardness
何を測るか:試料を一定量押し込んだときの力、または壊れる瞬間の力(破断荷重)。
何が分かるか:「噛んだときにどれだけ抵抗があるか」の大きさ。パンのふんわり感、ゼリーやプリンの絶妙な硬さ、豆腐の締まり、練り製品の歯ごたえ。もっとも基本的で、もっとも広く使われる指標です。
向いている食品:ゼリー・プリン・豆腐・かまぼこ・パン・餅・米飯・介護食・錠剤
例:えん下困難者用食品やユニバーサルデザインフードのように、硬さに規格が定められている分野では、この測定が適合判定の根拠になります。
研究ノート「ステーキ肉の解凍方法——圧縮と切断で同じ結論になるか」で、測定条件つきの例を公開しています。
弾力
Elasticity
何を測るか:試料を押し込んでから離すまでの、力と押し込み深さの関係。押し込む経路(往路)と戻る経路(復路)は重なりません。
「弾力」は、一つの物理量に一対一では対応しません。跳ね返りの強さ、形が戻る速さ、噛み返してくる手応え——どれも弾力と呼ばれます。このページでは往路と復路が囲む面積で扱います。この面積は、押し込みに使った仕事のうち戻ってこなかったぶん、すなわちエネルギーの欠損にあたります。欠損が小さいほど、加えた力が跳ね返りとして返ってくる——官能でいう「弾力」に近づきます。
このグミでは、押し込みに 27.3 mJ を要したのに対し、戻るときに返ってきたのは 14.4 mJ でした。差の 12.9 mJ(往路の 47 %)が囲まれた面積で、これが戻ってこなかったぶんです。荷重が 0 に戻った時点で 1.5 mm の凹みが残っており、測定のあいだには形が戻りきっていません。同じ硬さでも、この面積が小さい試料ほど噛み返してきます。
何が分かるか:「噛み返してくる感じ」の強さ。グミの噛みごたえ、かまぼこのプリッと感、麺のコシ、餅のもちもち感。硬さが同じでも、弾力が違えばまったく別の食感になります。
向いている食品:グミ・かまぼこ・麺類・餅・こんにゃく・チーズ・ソーセージ
研究ノート「グミ 3 種のゲル化剤——配合の違いはどこまで見分けられるか」で、測定条件つきの例を公開しています。
もろさ・サクサク感
Brittleness / crispness
何を測るか:壊れるときの力の変化の細かさ。圧縮していく途中で力が何度も小さく落ちる、その回数や落ち幅。
何が分かるか:クッキーやビスケットの「サクサク」「パリパリ」は、一度に壊れるのではなく、小さな破壊が連続して起きている状態です。この小さな破壊の回数を数えることで、サクサク感の強さを数値にできます[1]。湿気るとこの回数が減ります。
向いている食品:ビスケット・クッキー・せんべい・スナック・チョコレート・揚げ衣
研究ノート「ビスケットの吸湿——「サクサク」の低下はどの指標に現れるか」では、開封後の時間経過でピーク数が減っていく様子を、含水率の変化と対応づけて示しています。
- J. F. V. Vincent, J. Sci. Food Agric., 78(2), 162–168 (1998).
付着性・粘り
Adhesiveness
何を測るか:試料に押しつけたものを引き離すときに必要な力。
何が分かるか:「くっつく感じ」「歯や口の中に残る感じ」の強さ。餅や米飯のねばり、ジャムやペーストの糸引き、キャラメルの歯への付着。硬さや弾力とは独立した性質で、これが強いと同じ硬さでも食べにくさが変わります。
向いている食品:餅・米飯・ジャム・ペースト・キャラメル・とろみ食
研究ノート「パックご飯の経時変化——硬さ・付着力・凝集性は同じように動くか」で、測定条件つきの例を公開しています。
粘弾性——液体・半固体のなめらかさ
Viscoelasticity
何を測るか:試料をごくわずかに(壊さない程度に)繰り返し変形させたときの応答(動的粘弾性)、または一定の速さで流したときの応答(定常ずり)。粘性(流れる性質)と弾性(戻る性質)の両方。温度を変えながら測ることもあります。
何が分かるか:マヨネーズやクリーム、ヨーグルト、ソースのような「押しても壊れない」食品の、ねっとり感、なめらかさ、口どけ。同じ製品でも温度によって性質が大きく変わることが分かります。
向いている食品:マヨネーズ・ドレッシング・クリーム・ヨーグルト・バター・ソース・ペースト状の化粧品
研究ノート「マヨネーズと低カロリータイプ——温度で動くのは粘性か弾性か」では、定常ずりで 10〜40℃ の粘性率と弾性率を測定し、温度に対して 2 つの試料が逆の向きに動き、差が縮む様子を示しています。
代表的な試験の種類
Test methods
上の物性を取り出すための、具体的な試験の種類です。目的に応じて組み合わせます。
| 試験 | やること | 主に分かること |
|---|---|---|
| 圧縮強度試験 | 一定速度で押し込む | 硬さ、破断荷重 |
| 切断応力試験 | 刃で切り込む | 歯ごたえ、繊維の強さ(肉・野菜) |
| 引張強度試験 | 両端から引っ張る | 伸び、ちぎれやすさ(麺・皮・フィルム) |
| 付着試験 | 押しつけて引き離す | 付着性、粘り |
| 折れ曲げ強度試験 | 支えた試料の中央を押す | もろさ、割れやすさ(せんべい・チョコ) |
| テクスチャープロファイル(TPA) | 2 回続けて押し込む | 硬さ・弾力・凝集性・付着性をまとめて |
| 応力緩和試験・クリープ試験 | 一定量押し込んだまま/一定の力をかけたまま時間変化を見る | 時間とともに力が抜ける/変形が進む性質 |
| 粘弾性評価試験 | 微小ひずみを繰り返し与える | 粘度、弾性率、温度依存性 |
| ゼリー強度試験・えん下困難者用食品試験 | 規格で定められた条件で圧縮 | 規格への適合 |
何を測ればよいか迷ったら
Where to start
「サクサク感を保ちたい」「前のロットと何が違うのか知りたい」「規格に合っているか確かめたい」——知りたいことがはっきりしていれば、それに合う試験を選べます。逆に、まだ漠然としている場合は、まず試料を測ってみるのが早道です。応答の形を見ると、どこに注目すべきかが見えてきます。
無償試験では、知りたいことをお聞きしたうえで測り方をご提案し、測定結果と読み解きをレポートにしてお返しします。
お手元の試料で、まず測ってみる
Try it
知りたいことがはっきりしていなくても構いません。試料の種類と気になっている点をお知らせください。
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