しょっかんの研究所

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流水解凍のほうがおいしいって、本当?

冷凍した肉を戻すとき、「流水のほうがいい」とよく言われます。本当にそうなのか、噛みごたえを測って確かめました。

やったこと

市販のステーキ肉を 1 cm 角に切って、3 つのグループに分けました。ひとつは冷凍せずに冷蔵庫へ。 あとのふたつは冷凍してから、片方は室温に置いて自然に、もう片方は流水にあてて戻しました。 全部が同じ温度に戻ってから、上から押して、かかる力を記録します。

わかったこと

00.30.60.9030ひずみ率 [%]荷重 [N]冷蔵(凍らせていない)流水で戻した室温で戻した
3 とおりに戻した肉を、同じように押したときの線。たてがかかった力、よこがひずみ率(試料の高さに対してどれだけ押し込んだかの割合)です。肉の大きさが少しずつ違うので、深さではなく割合で揃えてあります。流水で戻した肉(緑)は冷蔵(青)とほとんど重なり、室温で戻した肉(橙)だけが下に離れています。線が下にあるほど、少ない力でつぶれる=やわらかいということ。

上から押してみると、流水で戻した肉は、冷凍していない肉とほとんど同じ硬さでした。 いっぽう室温で戻した肉は、目に見えて柔らかくなっていました。

グラフにすると差は一目でわかります。冷蔵のままの肉と流水解凍の肉はほぼ重なって上がっていくのに、 室温解凍の肉だけがずっと下を通ります。同じだけ押し込んでも、返ってくる力が小さい——つまり 歯ごたえが失われているということです。

解凍のときに出てくる汁(ドリップ)の量も、室温解凍のほうがはっきり多くなりました。

ただし、刃で切って測ると話が変わります。押したときは冷凍していない肉の 8 割以上の硬さが 残っていた流水解凍の肉も、切ったときの力は 5 割ほどでした。 「流水のほうがいい」のは確かですが、冷凍する前とまったく同じに戻るわけではないようです。

どうしてそうなるの?

肉は繊維の束です。冷凍すると、中の水分は氷の粒になります。この粒は、 温度がゆっくり上がるあいだに、小さい粒どうしがくっついて大きく育つと考えられています。 育った粒はまわりの繊維を押しのけて壊してしまう。

室温でだらだら戻すと、この「ゆっくり上がる」時間が長くなるので、粒が大きく育つ余地があります。 流水だと一気に温度が上がるので、育つひまがない。 同じように凍らせた肉でも、戻し方だけで差が出るのは、このためだと考えられます。 (今回は組織を顕微鏡で見たわけではありません。)

壊れた繊維は水を抱えていられなくなり、汁として出ていきます。ドリップが多い=繊維が壊れている、 という関係もここでつながります。

参考:中村誠, 加藤啓介, 石川県農業短期大学研究報告, 11, 45–49 (1981)./G. Çalışkan Koç et al., Compr. Rev. Food Sci. Food Saf., 24(2), e70136 (2025)./LWT, 209, 116771 (2024).

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